『Apocrypha: The Legend Of BABYMETAL』の感想
年齢を重ねるにつれ世界は既視感に満ちてくる。クソの洪水さながら押し寄せる過去の焼き直しをかいくぐり、自分にとって異質で、新鮮で、なおかつ型破り的なものに出会うためには、それ相応の努力が必要になる。
そんな努力の一環としてわたしが薄汚い手を伸ばしたのが、このグラフィックノベルなのだった。
絵柄について別段の不満はない。これが作者のスタイルなのだろうし、個人的に言って日本の漫画チックな絵柄よりずっといい。けれども、プロットにやや竜頭蛇尾な印象を受けた。キツネ神との会見により世界の危機を知り、生死を超えた転生の旅に出立するまでは前のめりに読める。が、その後の3つの戦いにマンネリ感を禁じ得ないうえ、余計な説明を削ぎ落とした終盤の展開は、読み手にかなりの想像力と思考的跳躍力とを要求する。
思うに、3人を別々の時空に転生させるという筋書きもあり得たのではないか。それぞれのキャラクターが前面に出てくるような冒険を、ときには多元中継的に描き、何だかんだの末に再会させる──そうすることで物語の緊張感を保つのみならず、終盤のカタルシスを底上げする効果が得られたのではあるまいか。
などとクソ評論家気取りでうんぬんするのはこれくらいにして、グラフィックノベルの主題歌であるところの新曲『Starlight』について少々触れておきたい。
わたしはこの新曲をとても気に入っている。何しろ賛美歌的で清らかなコーラスと暴れん坊で泥臭いインストが「聖と俗」、あるいは「天と地」とでも形容すべき乙なコントラストをなしており、見上げる星空の高さと踏みしめる大地の揺るぎなさとが感取せられる楽曲に仕上がっているからだ。おまけにギターがプロテスト・ザ・ヒーローばりの小粋なピロピロ芸をところどころに差し込んでくるとあっては、わたしの鼓膜が大はしゃぎするのも無理からぬ話だろう。
さて、改めてグラフィックノベルの頁を繰ってみる。すると、物語のクライマックス──相手を理解し、痛みを分かち合い、共に困難に立ち向かう場面──は、なかなかどうして感動的だなと気づく。たとえ理想と現実とに最早埋めがたい隔たりがあるとしても。