あんたのどれいのままでいい

BABYMETAL中毒者の手記

METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN さいたまスーパーアリーナ公演(11月16日)

左隣は長野から遠征のお兄さんだった。音楽を聴くところへ話しかける形になってしまったのにも関わらず、気さくに応じてくださって有難かった。わたしたちは、ファン歴、夢中になったきっかけ、ダークサイドうんぬんなど、随分いろいろの話をした。「もったいない」および「それは可愛い子だから言えることで」のふたつの意見が一致したのが愉快であった。

そうこうするうちにブリング・ミー・ザ・ホライズンのステージが始まった。個人的に彼らの音楽は性に合わないのだが、けれども生で体験してみると、ヘヴィなサウンドを下敷きにしつつ今日的なグルーヴなりエモーションなりをとらえようとする姿勢が伝わってきて、好感を抱かずにはいられなかった。

右隣は岩手から遠路はるばる車でお越しのおじさまだった。溌剌とした話しぶりにくわえて笑顔が何だかきらきらと輝いて見え、いいなあ、BABYMETALを存分に楽しんでいらっしゃるなあと、こちらまでうれしくなった。左隣のお兄さんを含めてわたしたち3人は東京ドーム公演に出席していたため、SU-METALが尻もちをついただの何だのの話でひとしきり盛り上がった。

そうこうするうちにBABYMETALのステージが幕を開けた。座席は400レベルの前から4列目、会場全体が見渡せる悪くない場所だった。わたしたち即席のライブ仲間は「かかってこいや!」とばかりに立ち上がり、女の子たちと神バンドとを迎える準備を整えたのだった。

今回のライブに参加するにあたって、わたしは決意を固めていた。その決意が意味するのは、この70分だか80分だかの大はしゃぎがとりあえずの区切りになるという事実だった。したがって、視るもの、聴くもの、肌で感じ取るものすべてに、一抹の感傷が溶け込んだ。巨大モニターに映るSU-METALとMOAMETALに目をやるにつけ、胸の真ん中らへんにやわらかな痛みをおぼえたのは、おそらくそのせいだろう。

それでもわたしは二度と戻らない一瞬々々に全身と全霊とを投げ出すことができたように思う。他所から見たら「あのおっさんちょっと独特だな」というくらいの有様であったに違いない。何しろ初めての楽曲はもちろん全部が全部すばらしく、現実を超えた何かヌミノーゼ体験のようでもあり、メタル好きの中年男がBABYMETALとともに歩んできた3年半の日々は、そこへ至って無事丸ごと肯定され、称揚され、祝福されたのだった。

もしタイムマシン(ミント味)に乗って2016年4月頃の自分に会いに行くとしたら、自信を持ってこう言ってやりたい──思い切って飛び込んでごらんなさいよ。これ以上ない体験の数々が待ってるんだから。笑って、泣いて、大はしゃぎだぜ? BABYMETAL最高だぜ?


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