『METAL GALAXY』全曲レビュー(DISC-2)
1. IN THE NAME OF
禍々しい雰囲気が充満するトライバルなイントロダクション。ファンカムでは単調に感じたが、スタジオ音源は終始退屈せずに聴ける。ヴォーカルのごそごそとした質感がちょっとデスクロックを彷彿させる。
2. Distortion (feat. Alissa White-Gluz)
ABABタイプのこの楽曲に必要なのは抜け感のあるメロディアスなCなんですと不満を漏らすのはこのくらいにして、アルバムに組み込まれると不思議としっくりくるメタルコアである。もっとも、わたしはゴリゴリの偽善者なので聴くたびに少々胸が痛むわけだが。
3. PA PA YA!! (feat. F.HERO)
SU-METALの力強く真っ直ぐな歌声にぞくぞくさせられる。何だかこう「押し通る!」といった感じがする。どうやら押し通った先で盆踊り大会をやっているらしく、ゲストにファッキン何とかなるタイ人ラッパーが出るんだそうだ。シュールな音世界に慣れれば慣れるほどキラーチューンと化してくる強烈なお祭りソングだ。
4. B×M×C
『META! メタ太郎』同様の3連符メタルが危険な香りを漂わせて帰ってきた。何やらラップバトル的な催しをモチーフにした的な楽曲と見えて、SU-METALが苦労する的なかたわら、MOAMETALが生き生きとレコーディングに取り組む的な姿が目に浮かぶようである。
5. Kagerou
アメリカ式のグルーヴと日本式の「もののあはれ」とが素敵に溶け合う、誤解を恐れずに言えばハードロック歌謡である。と同時に、SU-METALの新たな魅力が垣間見え、もしわたしが10代の若者なら、すぅ姉さんマジパネース、マジカッチェースと恐縮しつつも、一方で憧憬の念を募らせるだろうことは何ら想像に難くない。
6. Starlight
以前書いた感想を一部引用する──「賛美歌的で清らかなコーラスと暴れん坊で泥臭いインストが『聖と俗』、あるいは『天と地』とでも形容すべき乙なコントラストをなしており、見上げる星空の高さと踏みしめる大地の揺るぎなさとが感取せられる楽曲」だそうだ。確かにその通りだが、何を気取ったことを書いておるのだ。
7. Shine
歌い出しに衝撃を受けた。様々な感情がひとつの歌声に織り込まれるのみならず、強さと弱さとを併せ持つひとりの女性としてのSU-METALがはたと目の前に立ち現れるように感じられ、誇張でも何でもなく、胸が詰まった。『Tales of the Destinies』が「動」のプログレだとすれば、こちらは「静」のプログレであろう。
8. Arkadia
BABYMETAL史上最強のクサメタルが誕生した。初めて聴いたときはあまりのクサさに鼻が直角に曲がったが、わずか数回で耐性がつき、それからというもの毎回泣きそうになる始末だ。少し力んだような歌声がかえってエモく聞こえるし、「光より速く」からラストへ至る2分弱の多幸感と絶頂感はちょっと筆舌に尽くし難い。
【総評】
鋼鉄の鼓膜がおおむね満足する内容である。過去2作に比べてメタル的に不足を感じる部分もあるが、そこらへんは意図的かつ戦略的な判断の結果に相違なく、一介のファンがあれこれ言っても仕方がないと思って諦めていきたい。何にせよラスト3曲、いや、『Kagerou』を含めた4曲がとんでもない出来栄えで、すっかり満足してまた『FUTURE METAL』から聴くというのを日々繰り返している。中毒状態もいいところである。