あんたのどれいのままでいい

とあるBABYMETAL中毒者の手記

巨大キツネ祭り(SSA)9/27

アリーナCブロックの前から3列目ーーある種の割り切りが求められるポジションを得たわたしは、やはり例によって両隣の人に話しかけることにした。

右隣は少し会話しただけでそれとわかるメタラーお兄さんだった。ドリームシアターの大ファンとのことで、是非ともテイルズが観たいんですと熱い胸のうちを語っていた。左隣はファン歴5年にして赤ミサ皆勤賞というお姉さんだった。なんでも赤ミサの会場はとてもいい匂いがするんだそうで、これには思わず「今日はどうもすいません」と謝罪の言葉が口をついて出た。

そうこうするうちに例の7連打が鳴り響き、わたしは鉛色の現実に別れを告げた。セットリストは以下の通り。

1.BABYMETAL DEATH
2.ギミチョコ!
3.メギツネ
4.(神バンドソロからの)ヤバッ!
5.アカツキ -紅月-
6.GJ!
7.シンコペーション
8.META! メタ太郎
9.イジメ、ダメ、ゼッタイ
10.KARATE
11.ヘドバンギャー!!
12.Road of Resistance
13.THE ONE(英語Ver.)

前日を上回る熱狂がわたしをつらまえた。女の子たちの姿は24時間前に比べて心持ち大きく見える程度だったから、自ずと目視確認より大はしゃぎを優先する形になった。念願の「やだやだやだやだネバネバネバー!」を全力で合わしていくのは無論のこと、初めての「もっともっとほら!」、2日連続の「スキ、キライ」、その他いろいろを大変有難く頂戴した。

ライブが後半戦に突入し、『イジメ、ダメ、ゼッタイ』の紙芝居が始まったときである。右隣のメタラーお兄さんからウォール・オブ・デスへのお誘いを受けた。マジですかと答えて振り返ると、わずか4、5メートルの背後に早くも人垣が出来ていた。わたしは迷いを振り払った。ここでやらなきゃいつやるんだと自分に言い聞かせた。そうしてお兄さんのあとに続いてウォール・オブ・デスの輪に加わったのだった。

結果から言って、わたしは左膝に擦過傷を負った。最初の飛び込みでモッシュッシュしてから引き返す際、何かしら不手際をやらかしたらしい、次に踏み出した足がむなしく宙を蹴り、そのまま前のめりに倒れ込んでしまったのである。すかさず助けてくれた見知らぬおじさまに改めてお礼を申し上げたい。ぶざまに転倒したのも驚きなら、一瞬で助け起こされたのも驚きだった。何もかもがはてなと思う間の出来事で、ふと気がつくと左の膝小僧に懐かしい痛みをおぼえた次第である。

その後のわたしは「熱狂」を超えて「狂騒」の領域に足を踏み入れたように思う。ウォール・オブ・デスという通過儀礼を曲がりなりにも経た手応えからだろうか、ライブへの没入感が一段と増したのだ。

絶え間なく打ち寄せるカワイイメタルの轟音に全身全霊を捧げること、女の子たちの凜とした姿をこの目に焼きつけること、BABYMETALが紡ぎ出す壮大かつエキセントリックな物語の一部分になることーー冴えないおっさんはそれらすべてをやり遂げた。すべてをやり遂げて、愛おしさと、誇らしさと、感謝の気持ちとで胸がいっぱいになったとき、SSA公演2日目のショーはまるでうたかたの夢のように幕を閉じたのだった。

以上が48時間に及ぶ逃亡劇のあらましである。