あんたのどれいのままでいい

BABYMETAL中毒者の手記

あなたとわたしのトリヴィアム

この2ヶ月余り、わたしはクリスマスを心待ちにする5歳児さながらウキウキ気分で過ごした。というのも、わたしのキイチ率いるわたしのトリヴィアムがグラミー賞のベスト・メタル・パフォーマンス部門にノミネートされていたからである。

結果は惜しくも残念賞に終わったが、2ヶ月にわたって彼らのSNSを見張っていたわたしはトリヴィアムがよりいっそう好きになった。なんと気持ちのいい連中だろうと感心したし、ライブへ出掛けて行って4人の名前を力いっぱい叫びたい衝動に駆られた。

そこで今回はトリヴィアムの楽曲をいくつか紹介し、世に言う布教活動みたいなことをやってみようと思う。

Trivium - Pull Harder On The Strings Of Your Martyr [OFFICIAL VIDEO] - YouTube
全世界でセンセーションを巻き起こした2作目『アセンダンシー』は、言うなれば「若さ」という棍棒でしこたまぶん殴られるかのようなアルバムである。若さゆえの大胆不敵さと感傷主義とが見事に融合した甘辛い楽曲の数々を、何が何でも体験してほしい。

Trivium - Down From The Sky [OFFICIAL VIDEO] - YouTube
オールドスクールな内容の『ザ・クルセイド』に続いてリリースされた4作目、その名も『将軍』は、どこを切り取ってもトリヴィアム節と呼ぶほかない唯一無二の個性が鳴りしきる、早い話が名刺代わりの傑作である。やや遅効性なので最低100回は聴くように。

Trivium - Brave This Storm LIVE at Wacken 2013 - YouTube
5作目の『イン・ウェイヴス』がメタルコアへの回帰だとすれば、『ヴェンジャンス・フォールズ』は正統派モダンメタルへの挑戦と捉えることができるだろう。メロディの端々にディスターブドっぽいニュアンスが見え隠れするのはきっと気のせいだ。

Trivium - The Heart From Your Hate [OFFICIAL VIDEO] - YouTube
バンドは生き物である。したがって、太鼓担当が入れ替わっただけで新たな化学反応が生じ、クソ半端ねえクソ名盤が出来上がるなんてことも、当然ながら起こり得るわけだ。最新作『ザ・シン・アンド・ザ・センテンス』は概略そんなアルバムである。もちろん『サイレンス・イン・ザ・スノー』も決して悪い出来ではないが。

さあ、これであなたもすっかりトリヴィアムファンである。来るべき来日公演のサークルピットでお会いしましょう。

【おまけ】
Trivium - "Beyond Oblivion" (Alex Bent Drum Playthrough) - YouTube
新しいドラマー、アレックス・ベントのプレイスルー動画です。この細川俊之似の若者が「トリヴィアムを救った」とまで激賞される理由を、是非その目と耳とでお確かめください。

(7)鼻で笑っていただきたい

前回の投稿で10代20代の若者を散々アジっておいて無責任もいいところだが、しばらくBABYMETALから離れることにした。

第1に、YUIMETAL脱退による欠落感が依然として埋まらず、今後埋まる見通しも立たないからである。3人のBABYMETALから数々の感動と興奮とをもらってきた身として、そう簡単に割り切ることができない。

第2に、この1年間あれこれ心配したり、落胆したり、憶測したりするうちに、わたしがBABYMETALに抱いていたファンタジーの大部分がへたってしまったからである。いったんファンタジーがへたると楽曲までもがどこか空々しく聞こえるのだから不思議だ。

第3に、プロテスト・ザ・ヒーローの来日公演中止に伴うメンバーのコメント、某フェスのステージに立つトリヴィアムを最前列で撮影したファンカム、先日2回目を観た映画『ボヘミアン・ラプソディ』などを通じて、やはりわたしは音楽と人間とが分かち難く一体化しているようなのが好きなんだなと再認識したからである。

ご覧の通りの体たらくと言うほかない。過去に囚われるのみならず、手前で勝手にこさえた幻想が消え失せただの何だのと嘆くばかりか、BABYMETALに望むべくもないものを望んでいる。鼻で笑っていただきたい。何なら口汚く罵ってもらって構わない──「ごちゃごちゃうるせえな! さっさと失せやがれ、ケツの穴みたいな顔しやがってこの野郎!」とか何とか、その他いろいろ。

畢竟ずるに近づきすぎたのだと思う。だからしばらく距離を置くことにした。そうしていつの日か、心の底からBABYMETAL大好きと言える自分を取り戻すつもりだ。何故と言って、そっちのほうが断然楽しいからである。


【お知らせ】
余程の動きがない限り、次回の更新は「涙のダウンロード・フェスティバル(前編)」になります。

メタルレジスタンスとは何だらうか

映画『ボヘミアン・ラプソディ』の興奮冷めやらぬ今日この頃、ここらでBABYMETALの掲げるメタルレジスタンスとはいったい何だらうかと再考してみたい。

ファンそれぞれの解釈があって然るべき案件である。わたしはあくまでもメタル好きのおっさんだから、「メタルの認知及び地位の向上を目的とする活動」こそがメタルレジスタンスなんでしょうよと、違うんですかと、このように手前の願望丸出しで考える。

したがって将来、オーディエンスの半分やそこらが10代20代の若者で占められる日が、もし訪れるならば、わたしは何ら思い残すことなく身を引くつもりでいる。彼らがBABYMETALを好きになり、BABYMETALを通じてメタルに関心を持ってくれるとすれば、メタル好きのおっさんとして、それ以上の喜びはない。

無論、風向きは悪い。スリップノットのコリィ・テイラーが4年ぶりの新曲『All Out Life』にて「Old does not mean dead! New does not mean best!(古いは死んだを意味しねえ! 新しいは最良の意味でもねえぞ、このクソったれ!)」と怒鳴り散らすことからも察しがつくように、メタルをめぐる情勢は年々悪化の一途をたどっていると言ってまず間違いなさそうだ。

さりとて、とわたしは逆接の接続詞を持ち出したい。時代が変わっても人間の本質というのはそう変わらないはずだし、そうしてまた、メタルには若者を熱狂させるだけの魅力があると信じて止まないからである。

まあ聞いてほしい──何しろわたしもかつてはメタル嫌いの若者だった。ダサいし、臭そうだし、ナイーブさの欠片もないし、変に芝居掛かっているし、演奏テクニックをひけらかすし、あんなの誰が聴くかよと小馬鹿にしてさえいた。しかし、ロックを聴き続けるなかでさらなる刺激を、凶暴性を、魂の救済を求めるようになったわたしを快く受け入れてくれたのが、メタリカであり、パンテラであり、スリップノットであるところの、メタル界のレジェンドたちなのだった。

少しでも心当たりのある者は耳を貸してほしい──メタルにもいろいろある。エモいのもあればシャレオツなのもあるしカワイイのだってある。「古い」は「死んだ」を意味しない。「新しい」は「最良」の意味でもない。メタルレジスタンスは君たちの参加を待っている。

『Apocrypha: The Legend Of BABYMETAL』の感想

年齢を重ねるにつれ世界は既視感に満ちてくる。クソの洪水さながら押し寄せる過去の焼き直しをかいくぐり、自分にとって異質で、新鮮で、なおかつ型破り的なものに出会うためには、それ相応の努力が必要になる。

そんな努力の一環としてわたしが薄汚い手を伸ばしたのが、このグラフィックノベルなのだった。

絵柄について別段の不満はない。これが作者のスタイルなのだろうし、個人的に言って日本の漫画チックな絵柄よりずっといい。けれども、プロットにやや竜頭蛇尾な印象を受けた。キツネ神との会見により世界の危機を知り、生死を超えた転生の旅に出立するまでは前のめりに読める。が、その後の3つの戦いにマンネリ感を禁じ得ないうえ、余計な説明を削ぎ落とした終盤の展開は、読み手にかなりの想像力と思考的跳躍力とを要求する。

思うに、3人を別々の時空に転生させるという筋書きもあり得たのではないか。それぞれのキャラクターが前面に出てくるような冒険を、ときには多元中継的に描き、何だかんだの末に再会させる──そうすることで物語の緊張感を保つのみならず、終盤のカタルシスを底上げする効果が得られたのではあるまいか。

などとクソ評論家気取りでうんぬんするのはこれくらいにして、グラフィックノベルの主題歌であるところの新曲『Starlight』について少々触れておきたい。

わたしはこの新曲をとても気に入っている。何しろ賛美歌的で清らかなコーラスと暴れん坊で泥臭いインストが「聖と俗」、あるいは「天と地」とでも形容すべき乙なコントラストをなしており、見上げる星空の高さと踏みしめる大地の揺るぎなさとが感取せられる楽曲に仕上がっているからだ。おまけにギターがプロテスト・ザ・ヒーローばりの小粋なピロピロ芸をところどころに差し込んでくるとあっては、わたしの鼓膜が大はしゃぎするのも無理からぬ話だろう。

さて、改めてグラフィックノベルの頁を繰ってみる。すると、物語のクライマックス──相手を理解し、痛みを分かち合い、共に困難に立ち向かう場面──は、なかなかどうして感動的だなと気づく。たとえ理想と現実とに最早埋めがたい隔たりがあるとしても。

YUIMETALは微笑みかける

心の準備はできていた。けれども、パンチをもらった痛みを想像をするのと、実際にパンチをもらうのとでは、当然ながら結果はまるで異なるのだった。わたしは全身に謎の倦怠感をおぼえて眠られなくなり、何度となく寝床を抜け出しては換気扇の下でタバコを吸った。

「あー、残念だ」とつぶやく自分の声をわたしは耳にした。「まあでもこればっかりはなー、仕方ないよなー」とか何とか言うのも聞いたように思う。

翌朝、のろくさと起きて歯を磨き、顔を洗い、薬缶を火にかけてから居間へ戻ると、テーブルの上に何やら手紙のようなものが置いてあるのに気づいた。どういうわけか身に覚えはないが、筆跡からしてわたしが書いた文章であることは確かだ。以下にその全文を引用する。

『YUIMETALありがとう。8年間お疲れ様でした。あなたがこれまでにやってきたことは、比喩的に言えば、見知らぬ誰かにそっと寄り添い、にっこりと微笑みかけ、肩をポンと叩き、ときには背中をさすってあげることでした。そうやって国籍、性別、年齢を問わず、世界中の何十万いや何百万という人間に、元気や勇気や希望を与えたのです。だから謝る必要などこれっぽっちもないんです。むしろ誇りに思ってください。並の人間にできることじゃありませんし、すべてはあなたの才能と努力の賜物なのですから。さて、水野由結さん、あなたの今後が楽しみです。あなたの新たな夢が叶うことを信じて止みません。陰ながら応援させていただきます。それでは最後にお約束のあれを。キツネサインの準備はよろしいか。ウィーアー? ベビーメタール! シーユー!』

おお、なんという下手クソな字。判読不能な部分があったことをここに告白しておきたい。でもこれが本当のところです。ゆいちゃんありがとう。お疲れ様。

最後に以下の楽曲をYUIMETALへの、いや、水野由結へのはなむけの歌にしようと思う。歌詞はかなりエキセントリックだが、まあ、まあ、まあ、何にせよである──苦悩の日々を乗り越えた先に輝かしい未来が待っている的な内容と言って概ね差し支えないだろう。

Protest The Hero - Turn Soonest To The Sea - YouTube

メイビーサムデーイ!