あんたのどれいのままでいい

とあるBABYMETAL中毒者の手記

バンドやりたーい

数ヶ月前から内心にくすぶるものがある。はてなと思って覗き込むと、古い記憶の界隈で煙が一筋立ち上るのが見えた。わたしはもう一度コピーバンドがやりたい。

とはいえBABYMETALに挑戦するほど身の程知らずではない。もっとずっと簡単なので充分である。たとえ高度な技術を用いずとも、各々が楽曲の構成なり要点なりをしっかりつらまえたうえでタイトに合わすれば、脳内麻薬がしゃばしゃば出てキンキラリーンなのをわたしは知っているからだ。あれをもう一度味わいたい。

先走る気持ちはすでに楽曲選びの段階に入っている。

(1)Green Day - Hitchin' A Ride (Video) - YouTube
神様ありがとう。ビリー、マイク、トレの3人を地上に遣わしてくれてありがとう。おかげでわたしたちは最高に気持ちいいメロコアを手軽に演奏することができる。この楽曲以外にも、各パートの絡みが楽しい『ホェン・アイ・カム・アラウンド』、らしくない名曲『ウェイティング』、BABYMETALの出現を予見していたかのような『シーズ・ア・レベル』を候補に挙げておく。

(2)Three Days Grace - Animal I Have Become - YouTube
初めてバンドをやる世界中の若者たちに向けて書いたとしか思えない、簡単だのにカッコイイ楽曲である。ロック魂を内に秘めつつ淡々と刻むことで8ビートならではのグルーヴ感を出していきたい。蛇足になるが、ドラマーは見てくれの面白いのに限るというのがわたしの持論である。一生懸命に叩く姿がただそれだけで面白おかしく、笑いを誘うような人材がベストである。

(3)スピッツ / さわって・変わって - YouTube
スピッツのなかでも大好きな楽曲だが、とても簡単とは言い難い。とりわけリズム隊には一定の経験値が求められるように思う。蛇足になるが、人間というのは楽器を演奏するとき独特の癖が出がちな生き物である。何しろ身体の一部分に全神経を傾けて細かい作業をやるのだから、その負荷がほかの部分に現れてしまうのである。わたしの場合はあごが少々しゃくれてくるようだ。

ここへきて残念なお知らせがある。ギターケースを携えて外出するのが恥ずかしいことにはたと気付いてしまったのだ。前途多難と言わねばなるまい。

タイムマシンは実在する

部屋にフー・ファイターズのポスターが吊るしてある。引っ越して間もない頃に購入したものだから、かれこれ10年来の付き合いになる。

けれども10年前というと、わたしの音楽的関心はすでにフー・ファイターズを離れ、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジフー・マンチュー、サウンド・ガーデン、メタリカなどに及んでいた。では何故フー・ファイターズだったのか? どうして毎日嫌でも目にするポスターにフー・ファイターズを選んだのか?

まあ聞いてほしいーーそれはわたしがデイヴ・グロールという男を特別視していたからにほかならない。

何しろわたしがフー・ファイターズを聴いていたのは個人的に言って少々苦しい時期だった。糞溜めに胸まで浸かって朝昼晩カレーを食うような日々だった。そんな悩ましい日々に寄り添ってくれた楽曲たち、それらをこしらえたデイヴという男に、わたしはなおも恩義を感じていたのだ。だからこそポスターを部屋の壁に吊るしてルームメイト気分を味わうことにしたのである。

再出発の決意に満ちた1枚目、マジ半端ねえ名盤と評すべき2枚目、ポップなセンスが炸裂する3枚目、一転してストーナー方面に寄せた4枚目ーーデイヴこの野郎! あんたに何度泣かされたか!

先日、そんなデイヴ・グロール率いるフー・ファイターズとBABYMETALのズッ友写真が公開された。

わたしはそこに過去と現在とがひとつになるのを見た。かつてのヒーローが現在進行形の夢を後押しし、いっそう輝かしい未来へと送り出す瞬間を目撃した。

どうやらタイムマシンは実在するらしい。無論、それは厳密な意味でのタイムマシンではないが、しかし過去と現在とをしれっと結わえつけるの性質においてタイムマシン的な何かであり、おおらかな気持ちで見ればほとんどタイムマシンである。しかも有難いことに、わたしたちはそのタイムマシンに便乗することができるのだ。年齢、性別、国籍不問! 未経験者大歓迎! アットホームな雰囲気の現場DEATH!

まあ聞いてほしいーーそれはさながら巡礼の旅のようでもある。偉大な先人たちを訪ね、尊崇の念と、恩寵への感謝とを表明すると同時に、見果てぬ夢に向けてさらなる飛躍を誓う、一種の信仰的な道行きと言っていい。しかも有難いことに、わたしたちはその旅に便乗することができるのだ。

便乗ばかりしやがってこの野郎、少しは自分でも努力しろっつー話になってくるが。

正直嫉妬せざるを得ない

二十歳やそこらの若々しい自分でBABYMETALに出会いたかった。当時のフルーツゼリーみたいな感受性でもってBABYMETALを体験できたなら、それはそれは愉快だろうと思うのだ。

しかし何しろ手立てがない。おっさんの心と身体とをいっぺんに若返らせるなど最先端のテクノロジーをもってしても不可能である。そこでわたしは例のタイムマシン(ミント味)に乗って学生時代の自分を訪ねることにした。あの野郎にBABYMETALを体験さして何がしかの感想を引き出してやろうという魂胆なのだった。

薄曇りの午後だった。若者たちの訝しげな視線を独り占めしながら赤煉瓦の上を歩いていくと、学食前のベンチでうつ伏せになって眠りこけている男が目に入った。ぼさぼさの金髪、薄汚い古着のジャージ、裾がほつれたリーバイスを腰で履き、斜めにすり減ったナイキの底をこちらに向けている。一目見てあの野郎とわかった。

おいと声をかける。わずかな反応がある。ややあって野郎はベンチに肘をついてのろくさと起き上がり、大きなあくびに何度か邪魔された末にようやくのことで煙草に火をつけた。そうして煙草をくわえたまま、夢の続きでも見るようにぼんやりと前方を眺めている。

その様子を見たわたしは前置きの一切を端折ることを思いついた。それが何であれ音楽に関しては一定の反応を示すだろう確信も背中を押した。わたしは懐からスマホを取り出すと、いまだ半分夢のなかにいる野郎の鼻先にBABYMETALのライブ動画を突きつけたのだった。

野郎は終始無言、無表情のうちに人生初のBABYMETALを体験した。それからまるで猫のくわえてきた何かを見るような苦笑いを浮かべて言った。「まあ、あんたが何者なのかはこの際どうでもいいよ。ただこれは糞だな。メタル風のアイドルなんてどこの誰が考えたか知らないけどさ、はっきり言って超ダサいから。マジありえないから。ハハッ、何だよあれ、お遊戯会かっつーの」

これには思わず手が出た。野郎も負けじとやり返してきた。その後の展開はご想像の通りである。わたしは自らの誇りと女の子たちの名誉のために闘い、そうしてーー

以上の苦々しい経験を踏まえてわたしはこう言いたい。10代や20代のBABYMETALファンの皆さま、あなたたちは偉い。末頼もしい。正直嫉妬するくらい見る目がある。若い頃のわたしとは大違いだ。

曲がりなりにもメタル好き

曲がりなりにもメタル好きのBABYMETALファンとして、ここらでお気に入りのメタル部分についてあれこれ書き散らかしておきたい。

シンコペーション』のツーバス連打
ロック色の強い楽曲にあって発作的に暴走するかのようなツーバスの連打がたまらない。「ムラムラしてやってしまった。反省している」というお決まりの供述をどこか彷彿させる。

『紅月-アカツキ-』のバッキング
ややこしいブリッジミュートが山盛りである。それでいて一本調子に陥ることなく、歌詞内容が提示するところの感情の動きにぴたりと寄り添い、ときには激情に駆られるかのように、ときには穏やかに語りかけるかのように、緩急自在にしてエモーショナルな刻みを終始聞かせてくるのだから胸がいっぱいになる。

『イジメ、ダメ、ゼッタイ』のイントロ
哀感漂うスキャットから一転、ガトリング砲のごとく速射されるあまりにも破壊的でメタリックなフレーズに鋼鉄魂が震える。ちょっと弾いてみたい気持ちもあるにはあるが、どうせ右手が全然動かないんだろうからよしておく。

『Road of Resistance』のライトハンド奏法
かつては嫌悪していた自慰主義的なピロピロ芸がこうも琴線に触れてくるとは思わなかった。太鼓のブラストビートを含めた熱量が、いや、光量がちょっと尋常ではない。たくさんのストロボライトが烈しく明滅するかのような、何やら妙にまぶしい感じがするのだ。

『KARATE』のAメロBメロ
例のヘヴィでグルーヴィなリフは無論のこと、その後に続くAメロBメロのメタルメタルしいインストも特筆に値する。やや紋切り型の感こそ否めないが、1番と2番とで構成をテレコにするひと捻りにより、それぞれのメロディをいっそう引き立たすことに成功している。ちなみに最もお気に入りなのは2番のAメロ。

『メギツネ』のコンコンコッココンコンコッコン!!
メタル音楽の魅力のひとつはマニアックな「刻み」及び「キメ」にあるとわたしは考える。したがってメタル好きがカッコイイと感じるキメの部分に、いかにもアイドル的で可愛らしいキツネの鳴き声を乗っけた時点で、すなわちこの「コンコンコッココンコンコッコン!!」が何者かの頭に浮かんだ時点で、BABYMETALの掲げる「アイドルとメタルの融合」はすでに完成の域に達していたのではなかろうかーーそう思わずにはいられない鮮やかな手口である。

まさかの踊りレビュー(2)

素人がプロの踊りをうんぬんするコーナーが約1年ぶりに帰ってきた。今回も持ち前の厚顔無恥なところを存分に発揮していきたい。

ヤバッ!
猫じゃらし的な何かと見てまず間違いない。とりわけ魅力的に映るのは「ピッポパッポピッポパッポピー」の人差し指だ。何だかよくわからないが目を奪われる。吸い込まれそうな感じさえする。仮にわたしが猫ならば無我の夢中で飛びつくだろうこと請け合いの踊りである。

AMORE-蒼星-
高さ20メートルのステージでひらりひらりと舞い踊るSU-METALを観るたびに「奉納」の2文字が脳裏をかすめる。ほとんど神事と言っていい厳粛さと霊妙さとをしかと味わいたい。

シンコペーション
人類史上最高にかっこいい糸巻きが誕生した。無論、糸巻きのみならず、冒頭の力感溢れるポージングから「デーンデーンデーン!」でグッと腰を落として身構える、この一連の流れには闘志のようなものすらうかがえるし、本来なら少女趣味的な「スキ、キライ」のくだりまでもが少々サディスティックな塩加減を帯びるとあっては速やかに降参するほかない。総じて何やら仏像的な、もっと言えばインド神話的なニュアンスを認めるのはわたしだけだろうか。

GJ!
カワイイ検知器の針が振り切れるやつである。けれどもカワイイ方面にばかり気を取られていては、YUIMETALとMOAMETALの真価をつらまえ損なう。一生懸命などという賛辞が最早失礼にあたる領域に達しつつあるのではないか。

Tales of The Destinies
東京ドーム公演での初披露までにどれほどの練習を重ねたのだろうーーそう疑問せざるを得ないのはマジ半端ねえ仕上がりだからである。ディテールのひとつひとつを決しておろそかにしない鋼鉄魂が伝わってくるからである。「伸ばすところは最後まで伸ばす。止めるところはしっかり止める。ほーら、中途半端にしないの」などと幼い頃から口酸っぱく指導されてきたものと憶測する。そうでなければこうはならないはずだ。畢竟すべてが見どころである。

先日ふとマイケル・ジャクソンが生きていたらと考えた。彼はBABYMETALのパフォーマンスをどう見ただろう。もちろん想像の域を出ないが、こっちがドン引きするほどポジティブな反応が得られたような気がするのである。