あんたのどれいのままでいい

BABYMETAL中毒者の手記

『METAL GALAXY』レビュー

BABYMETALの新作『METAL GALAXY』をぶるぶると震える手で開封しながら、わたしはほとんど祈りを捧げていたと言っていい──妙ちきりんな楽曲が山盛りの予感がするけれども、どうか好きになれますように。どうか500回聴けるアルバムでありますように。

結論から言ってとんでもない代物なのだった。2枚組の全16曲を一気に聴き終えたときの心持ちは、小説に喩えるなら夢野久作ドグラ・マグラ』の読後感にどこか似ていた。何しろカワイイとブルータルとナンセンスとが極彩色の混沌をなす、古今未曾有の音世界が実に緻密に構築されている。日本三大奇書ならぬ日本三大奇盤のひとつに数えられて何ら不思議はない出来である。

DISC-1はアイドルポップ方面に、DISC-2はメタル方面に寄せた構成となっており、90年代風のユーロビートを大胆に取り入れた──などとお利口さんなレビューを書くつもりは、しかし、これっぽっちもない。

このアルバムに底流するのは逸脱をとことん楽しむ姿勢である。普通、世間並、安定志向、そんなものはクソ喰らえの精神である。わたしもそれに倣って、肝心の中身にまったく触れない野放図なレビューをやり遂げる所存だ。楽曲ごとの感想は次回の投稿にて書き散らかしますので何卒ご容赦ください。

それにしてもと感心せざるを得ない。1枚目、2枚目ときて、3枚目がこの内容である。KOBAMETAL氏は24時間365日、寝ても覚めてもBABYMETALのことを考えているんだろうなと思った。当然と言えば当然の話だが、彼のBABYMETAL愛をあらためて見せつけられ、どうだ俺が世界一のBABYMETALファンなんだぜと、グランドチャンピオンなんだぜとこう宣言されたような気がして、わたしは胸を打たれたのだった。

ひとつ全体的に言えることとして、SU-METALの声がより近く、より生々しくなったのには鼓膜が喜んでいる。いくつかの楽曲においては余程の至近距離で歌うようにさえ感じられ、いい年こいたメタル好きが思わずギクリとさせられる始末である。無論、要所々々で輝きを放つMOAMETALの歌声も聴き逃すことはできない。

さて、アルバムはラスト3曲で見事な着地を決める。終始めちゃくちゃなアクロバットを演じてきたのが嘘のように10点満点の着地をやってのける。そこへ至って一段と華々しく放射される鋼鉄魂とチームBABYMETALの底力とを、是が非でも体験していただきたい。

評価:★★★★★(まさに奇盤! 大いなる逸脱と完璧な着地! さあ、笑って踊って泣くがいい!)