あんたのどれいのままでいい

BABYMETAL中毒者の手記

風邪の引きはじめに効くメタル

わたしはほとんど風邪を引かない。日々メタルを摂取するのみならず、おや風邪かなと思ったら、(1)常備してある葛根湯を飲み、(2)お気に入りのメタルを聴いたのち、(3)さっさと寝床に這入るからだろう。

世界にはメタルがそのうちガンに効くようになるなどと言い張るアヴァンギャルドの輩もいるが、しかし、わたしはメタルと葛根湯とを両の天秤にかけてしげしげと眺める程度には現実的な人間であるから、メタルは風邪の引きはじめに効くとこう主張するにとどめたい。

そこで今回は風邪の初期段階に効き目のありそうなメタルをいくつか紹介する。これらを聴いて免疫力だか自然治癒力だかを存分に高めていただければと思う。



数ヶ月前にアルバム『王様はデブで老いぼれである』を入手して聴くデストレイジ。ニューメタルのグルーヴ、メタルコアのエモみ、プログレのアブノーマル感、これらを3色丼さながらに盛り合わせた、なかなか独特な音世界を提示するイタリアのバンドだ。思わず頰が持ち上がるカッコイイ馬鹿々々しさが、風邪のウイルスなど一瞬で蹴散らしてしまうこと請け合いである。



プロテスト・ザ・ヒーローには平素より大変お世話になっている。心身ともにくたびれ果てた金曜日の帰宅時、名盤『ケザイア』を最初から聴いてって9曲目に及び、この「ウォーキーン、ワーン、ラースト、マーヨー」を口ずさむとき、わたしは十中八九涙ぐんでしまうのだった。何百回と摂取しても色褪せない力強さと美しさに、風邪のウイルスなどひとたまりもないはずだ。



変化球はいいから直球をよこせと不満顔のあなたにはマシーン・ヘッドを推す。音楽性にやや揺らぎのあるバンドだが、現代的であり、なおかつ正統的であるという、この両輪がばっちり噛み合ったアルバム『ザ・ブラッケニング』は圧巻の出来と言うほかない。攻撃性と叙情性とが素敵にタッグを組む彼らの楽曲を聴けば、風邪のウイルスなど一目散に逃げ出すことだろう。



ここへきて恐ろしいことに気づいてしまった。わたしがほとんど風邪を引かないのは、日本古来の俗諺が指摘するように、わたしが馬鹿だからではないのか。風邪の諸症状を自覚できないほど愚鈍の者だからではあるまいのか。おまけにわたしはメタル好きである。BABYMETALのファンである。風邪など引きっこないんである。