あんたのどれいのままでいい

BABYMETAL中毒者の手記

(2)再会

約1年の空白を経て、わたしはBABYMETALとの再会を果たした。

某掲示板のニュース記事か何かだったと記憶している。記事の最後にはYOUTUBEへのリンクが貼られていた。

前回に同じく、アイドルなんか願い下げだぜとマッチョな自分を気取ったわたしは、ところが何やら名状し難い、ある種のテイルズ・オブ・ディスティニー的な力に背中を押されるのをありありと感じた。そうして自嘲的な薄笑いを浮かべながら『KARATE』のMV動画をクリックすることになる。

やがて馬鹿にブルータルなイントロがわたしの鼓膜を揺すぶりはじめた。

おいマジか。嘘だろ。このリフめちゃくちゃカッコイイんですけど!まったくの想定外なんですけど!誰か助けて!

さて、ここで歌い出しまでの35秒間を量子論的に引き伸ばし、わたしの音楽的アイデンティティの形成過程を振り返ってみたい。

若き日のわたしにロックの洗礼を施したのはほかでもない、ジ・ミッシェル・ガン・エレファントだった。それは文字通りの信仰であり、息苦しく切ないまでの願望であった。

並行してザ・フー、ジャム、クラッシュ、ダムド、バズコックス、ドクター・フィールグッドなどの黴臭いやつを、ニルヴァーナスマッシング・パンプキンズ、グリーンデイ、フーファイターズ、ブリンク182など、大掴みに言うところのラウドロックを熱心に聴いた。

その後、ストーナーロックの馬鹿々々しさに当てられ、フー・マンチューとクイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジを聴き倒したわたしは、いまになって思えばメタル界隈への橋渡し役となったヘヴィロックバンド、サウンドガーデンに脳天からのめり込む。

ふと顔を上げるとメタリカがいた。ついでにパンテラもいた。わたしはそれらがとても気に入った。

実際問題、彼らの音楽はわたしがヘヴィメタルに対して抱いていたネガティヴなイメージを払拭した。例のハイトーンヴォイス、公開オナニーまがいのギターソロ、嫌に扇情的でナルシスティックなコード進行、演奏技術のひけらかし行為などがそれに該当する。

ところがである。いや、だからこそと言うべきか、以後のわたしが傾倒したのは正統派メタルではなく、一部の純粋主義者に大ブーイングを食らったオルタナティヴ・メタルと呼ばれるジャンルだった。システム・オブ・ア・ダウンスリップノット、ディスターブド、クロウフィンガー、マッドヴェインなどの面々だ。

さて、このあたりでイントロの35秒間が都合良く終了したものとする。

初めて耳にするBABYMETAL、のっけから強烈なリフで畳み掛ける『KARATE』、その歌い出しを聴いたわたしは、思わず「何だこりゃ!」と叫んで架空のソファから比喩的に転げ落ちた。

女児の甲高い声が右から左からセイヤ!セイヤ!と打ち寄せてくるではないか。

やっべえ騙された!かっこいいイントロにまんまと釣り込まれちまった!こんなもん聴けるかよ!いくら何でも可愛らしすぎるでしょうが!(つづく)