あんたのどれいのままでいい

BABYMETAL中毒者の手記

佐助稲荷神社

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鎌倉の佐助稲荷神社を訪ねた。瀟洒な家々の左右に軒を連ねる曲がりくねった路地をしばらく歩くと、新緑と鳥居の朱塗りとが織りなす鮮やかなコントラストが目に飛び込んできた。

 

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例によって内心のみだりにざわざわする道行きである。いわゆる潜在意識がいくつものシンボリックな意味合いを感じ取るからだろう。

 

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拝殿で「キツネ祭りのチケットが当たりますように」とお祈りした。すると、どこからか威厳に満ちた声が聞こえてきた。「ほほう、またしてもキツネ祭りか。つい先日もお前さんと同じくらいな年恰好の男がやってきて、チケットがどうのこうのと熱心に祈願しておったわ。まあ案ずるでない。その程度の願いなら余が手を回してやれんこともないのでな」

 

やったー! キツネ祭りのチケットが当たるー!

祝・だいたい1周年

BABYMETALに出会ってだいたい1年が経過した。

相手が相手ならそれなりの贈り物を用意すべき局面である。「だいたい」などと言葉を濁さざるを得ない不行き届きについて、もっともらしい言い訳を案出すべき局面でもある。あいにくと言うべきか、有難いことにと言うべきか、その必要はこれっぽっちもない。

かわりにわたしは自問するーーおいブタ野郎、お前はこの1年間「どれい」の名に恥じぬ忠誠心を呈してご主人様に尽くしたか?

これがそうとも言い切れない。何しろ今年の2月と3月、わたしはBABYMETALをほとんど聴かなかった。ときおり思い出したかのように映像作品を眺めては、「はあ、めんこいなあ」と溜め息をつく程度だった。

不安である。一種の強迫観念的な不安がBABYMETALを遠ざけたのであるーーもしかするとわたしは自分を甘やかすのではないか? このままポップで楽しくて可愛らしい音楽ばかりを聴き続けたら、いつか脳味噌がゆるゆるになってしまうのではないか?

3月下旬の肌寒い夜だった。仕事を終えたわたしは心身ともにくたびれ果てていた。のろくさとした足取りで駐車場を横切り、車に乗り込んでエンジンをかけたとき、ふと、アルコール依存症患者のいわゆる頭脳明晰な一瞬とやらが訪れた。そうしてわたしは自分がなすべきことをはっきりと理解したのだったーーよし、しばらくぶりにBABYMETALを聴こう。せっかくだから遠回りして帰ろう。

自宅に帰り着く頃のわたしがどんな心境だったか?

まったくの偶然ながら、そのときの心境はジ・ミッシェル・ガン・エレファントの名曲になぞらえることができる。天国へ引っ越して久しいアベフトシ師匠のツンデレMCを含むライブ動画を、ここに満を持して紹介したい。


翌朝、エネルギッシュに目覚めたわたしは、洗面所の鏡に映る奇妙なヒゲを生やした中年男について、おおよそ以下のような洞察を得たーーどうやらこのおっさんの心と身体とは、依然として強く、激しく、ほとんど滑稽なまでにBABYMETALを求めるらしい。BABYMETALでしか得られない特別な何かを細胞レベルで必要とするらしい。おお、なんというブタ野郎。

そんなわけで祝・だいたい1周年である。

『LIVE AT TOKYO DOME』レビュー

「人間というのはここまでいけるのか」ーーこれが率直な感想である。であるが、まずもってRED NIGHTとBLACK NIGHTの双方について所感を述べておきたい。

【 RED NIGHT 】
あらためて映像で観ると途方もない舞台セットである。歌と踊りとに加えて、あれを上ったり下りたり、潜ったり出てきたり、挙げ句まあまあの速度でぐるぐる回転させられたりするのだから、女の子たちの心身両面の負担は想像するに余りある。セットリストが少ないだの何だのと不満を漏らしていた公演当時の自分を引っ叩いてやりたくなった。

毎秒が見どころと評するべき内容だが、わたし個人としては『シンコペーション』と『Tales of The Destinies』に浅からぬ感銘を受けた。それぞれのパフォーマンスにBABYMETALの未来を見るような気がしたからである。何しろ『シンコペーション』ではカワイイ成分に頼らない純然たるカッコイイの提示が、また『テイルズ〜』では、楽曲そのもののすばらしさと神バンドの演奏とを含め、総合芸術としてさらに一段高いレベルへの到達が見て取れる。

【 BLACK NIGHT 】
わたしが出席したのはこちらである。日々色褪せていく記憶を少しでも補修すべく気負って臨んだのだが、何のことはない、むしろ新発見の連続だった。そら当然である。3階席から個々の表情など読み取れるはずもない。挙げ句「わあ、ここでぐるぐる回ってたんだ」などと驚く始末である。この野郎しっかりしろと公演当日の自分を蹴り飛ばしたくなった。

『BABYMETAL DEATH』でスタートし、『メギツネ』と『ヘドバンギャー!!』を経てラストの『イジメ、ダメ、ゼッタイ』へとなだれ込む鉄板のセットリストが見どころと言っていい。加えて『おねだり大作戦』から『NO RAIN, NO RAINBOW』、そうして『ド・キ・ド・キ☆モーニング』へと続く中盤の構成は、心理学における振り子効果だか何だか知らないが、とかくオーディエンスの感情をまんまと翻弄し、爆発的な盛り上がりを生む要因となっている。

【 人間うんぬんの件 】
才能に恵まれ、仲間に恵まれ、また教師に恵まれた者たちが、自ら道を求め、その道に不断の努力という足跡を刻み続けた結果の一部始終が、この2枚組には収められている。人間というのはここまでいけるのか。こうも美しく、こうもひたむきで、こうも力強い輝きを放つ何者かになり得るのか。くっそ感動した。

評価:★★★★★(半端ない)

エキセントリックな感動をあなたに

かれこれ半年ほど前、「BABYMETALは何故泣けるのか」という文章を書いた。ズッキーニサイズの1本糞をひねり出すに等しい難業であったと記憶するところだが、いまになって読み返すと何だか少々物足りなく感じられる。

とっつきやすさやわかりやすさを優先するあまり、もう一歩踏み込んだ考察に至らなかったのが原因だろう。そこで今回は、わたしが映画鑑賞を通じて体験したエキセントリックな感動を取り上げ、それらをBABYMETALにこじつけることで、半年前の不足を補っていきたい。

『サイン』
この糞映画のどこに感動するのだと眉根を寄せる者がいるかもしれない。しかしわたしは、ホアキン・フェニックス演じる農家手伝いの男、すなわちホームランの最長飛距離とシーズン最多三振という2つの記録を持つ元マイナーリーガーが、思い出のバットを手に宇宙人に立ち向かうシーンで漏れなく落涙する。その瞬間、稲妻のように使命が下るからである。力いっぱいバットを振ることにかけては誰にも負けない男の生き様を、その晴れ舞台を、その渾身のスイングを目の当たりにするからである。

全編通して「馬鹿」と「グロ」と「バイオレンス」とが横溢する、まさに「最高にかっこいい糞」と形容すべきタランティーノ作品である。この映画でわたしの涙腺をこそぐるのは青葉屋での大立ち回りにほかならない。何しろユマ・サーマン演じる女殺し屋の動きという動きが著しく常軌を逸しており、いや、著しく常軌を逸しておるからこそ、その一挙手一投足に肉体の芸術を見出すからである。有り得べからざる身体操作の数々によって発露する、熱烈峻厳たる内面性をしかと感受するからである。

誰が呼んだか「マッチョ・ポルノ」、鬼才デヴィッド・フィンチャー監督の大傑作である。わたし個人としては「ヘヴィメタルの精神をそっくりそのまま映像化したような作品」と見る。ピクシーズの『ウェア・イズ・マイ・マインド』が感傷的なイントロを鳴らすなか、金融街の高層ビル群が爆破され、次から次へと倒壊していくラストシーンに涙が止まらない。その瞬間、既存の権威やら、枠組みやら、価値基準やらが覆されるからである。馬鹿らしくも鮮やかな夢が華々しい勝利を収めるからである。

ご理解いただけただろうか。すべてのエキセントリックな感動がそこはかとなく、あくまでうっすらと、最悪ファールチップくらいの感じでBABYMETALに通じてくる。我ながら絶妙なこじつけ芸だなと感心せざるを得ない。

アヴァターの話

BABYMETALが表立った動きを見せない今日この頃、わたしはスウェーデン出身のヘヴィメタル・バンド、アヴァターに夢中である。

アマゾンの野郎が相変わらず愚図々々しているので、不本意ながらひとつ飛ばして最新アルバムを手配した。するとヴァッケン・オープン・エア(2015)でのライブを収録したDVDがついてきた。これを有難く鑑賞する。

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ハロー! 俺たちがアヴァターだぜ!

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ワーイ!

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いや、ここだけの話だけどさ。

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子どもの頃からヴァッケンのステージに立つのが夢だったんだ! みんなありがとう!

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イエーイ! アヴァター! アヴァター!

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せーの! プッチャキツネアーップ!

最新アルバム『Feathers & Flesh』は個人的に言って★5つの仕上がり具合である。システム・オブ・ア・ダウンのデビュー作を手掛けたプロデューサーを招聘したとあって、まさに変幻自在、まさに縦横無尽、まさに参差錯落の混沌に持ち前の馬鹿々々しさとメタル魂とがほとばしる極めて濃厚な内容となっている。

試しに1曲お聴きいただきたい。

思わず「何じゃこりゃ!」と薄笑いを浮かべたあなたはファンへの第一歩を踏み出したと言っていい。一方で「こんなのSOADのパクりでしょうが!」とお怒りのあなたにはその真偽を確かめる義務が発生した。いずれにせよ、もっと評価されて然るべきバンドだとわたしは思う。